大判例

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東京地方裁判所 昭和36年(ワ)2267号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決要旨〕会社更生手続開始決定があつたときは、第二次納税義務者に対する滞納処分も中止すべきであるが、これに反してなされた滞納処分は取消しうべき瑕疵あるに止まり、無効とはならない。

〔事実と争点〕本件建物はもと訴外宍戸鉱業株式会社の所有であつて、昭和三〇年六月一日被告宍戸一人がこれを右訴外会社から譲り受けたものであるが、当時訴外会社は北海道幌別町に合計一五万余円の租税債務を負担し、これを滞納していたため、幌別町は昭和三一年一二月一〇日訴外会社の財産譲受人たる被告宍戸一人を第二次納税義務者に指定して同人にその納付通知をし、その納付がなかつたので、被告宍戸一人に対し右第二次納税義務の滞納処分と同被告自身の区民税の滞納処分として、本件建物につき差押処分をするとともに、公売処分による換価手続にしたがい、原告を買受人とする売却決定をして、その旨の所有権移転登記手続を経た。そこで原告は、所有権に基いて被告両名に対し本件建物の明渡しを求めたが、被告らは、右売却決定のあつた昭和三三年一二月二四日の前である同年八月二九日訴外会社について東京地方裁判所による会社更生手続開始決定があり、したがつて会社更生法六七条二項により、開始決定の日から一年間は訴外会社の財産に対し国税徴収法の例による滞納処分をなし得なかつたものであり、主たる納税義務者の財産に対し法律上滞納処分をなし得ない以上、これに附従的かつ補充的な義務を有するにすぎない第二次納税義務者である被告宍戸一人の財産に対しても滞納処分をなし得なかつたはずであり、これに違反してなされた本件売却決定は無効であるから、原告はいまだ本件建物所有権を取得していない、と抗弁した。

判決は、次のように説いて結局は被告の抗弁を排斥した。

〔判決理由〕しかしてかかる場合には、右訴外会社の財産譲受による第二次納税義務者(昭和三四年法律第一四七号の国税徴収法施行前の国税徴収法―以下『旧国税徴収法』という―第四条の七第一項、同年法律第一四九号による改正前の地方税法―以下『旧地方税法』という―第一一条の三第一項)である被告宍戸一人の財産についても滞納処分を続行し得ないものであるか否かにつき按ずるに、主たる納税義務者の会社更生手続開始決定による該会社財産についての滞納処分中止のごときは、もつぱら主たる納税義務者たる会社の特殊個人的事情にもとずいて単に手続上一定期間該会社に対し滞納処分の執行をなし得ないというにとどまるのであるから、その効果が財産譲受人の第二次納税義務に影響を及ぼすことはないという考えもあるが、もともと第二次納税義務の制度は、本来主たる納税義務者に対する滞納処分によつて徴収すべき租税の徴収確保のためのものにすぎないのであるから、第二次納税義務者からその租税を徴収するに当り、租税徴収権者に対し、その資力の差により得べき事実上の利益の点は格別、その他の点においては特別の規定がない限り、本来主たる納税者から徴収すべき場合に認められる以上の利益を認める必要がないものというべく、したがつて本件の場合のごとく、主たる納税義務者に対する滞納処分につき、法令上これを中止すべきものとされているような場合には、その制限が解かれるまでは、第二次納税義務者に対する滞納処分もまた中止すべきものと解するのが相当である。したがつて訴外幌別町は前記期間中は被告宍戸一人に対する滞納処分を中止しなければならなかつたものであり、これに反してなされた本件建物の公売処分はこの点で手続上瑕疵があつたものといわなければならない。しかし、会社更生法第六七条第二項が滞納処分の中止を認めた趣旨はもつぱら更生会社の更生計画の樹立を可能ならしめるための必要にもとずくものであるところ、該会社の第二次納税義務者の財産について滞納処分を続行しても右会社の更生手続にはさして支障がないこと、しかして同条第六項は更生手続に支障を来たさない処分は原則としてその続行を許す趣旨を明らかにしていること、なかんずく第二次納税義務者の実体的な義務内容は主たる納税義務者の更生手続開始決定、更生計画の成否およびその内容、その他更生手続の進行の結果如何により消長を来すものではない(会社更生法第二四〇条第二項参照)から、主たる納税義務者が納税をしないかぎり、いずれその滞納処分を続行されざるを得ないものであること、などをあわせ考えると、本件建物公売処分についての前記瑕疵をもつて、右公売処分を取消しうるものとすることは格別、いまだこれを当然に無効とするほどの明白かつ重大な瑕疵であるとは認めがたいところといわなければならない。(浅沼武 中川幹郎 渡辺忠嗣)

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